バレリーナである前に、すてきなレディでありますように!Vol.9
第47 回芸術劇場の演目は「バヤデルカ」です。先日のオーディションにはたくさんの方にご参加いただきありがとうございました。今回はこの作品を簡単にご紹介 、また、作者であるマリウス・プティパに触れます。
バヤデルカは 1877 年サンクトペテルブルク、マリインスキー劇場でマリウス・プティパ (1818~1910) の振付により初演されました。寺院に使えるバヤデルカ(インドの 寺院に使える 舞姫 のニキヤ )と 武将ソロル は愛し合ってい ます が、ソロルは王の命令で王女ガムザッティと結婚しなければな りません 。ソロルの本心を知ったガムザッティはニキヤが捧げ持って踊る花かごに毒蛇を隠して、ニキヤを殺してしま います 。さらに、聖職者 の身ながらニキヤによこしまな好意をいだく高僧、欲にくらむガムザッティの父ラジャの登場 など 、 愛憎、嫉妬、殺意が 渦巻くドラマティックな展開です 。
ソロルとガムザッティの婚約式での豪華なグラン・パ 、 インドの太鼓の踊り、 傷心の ニキヤの花かごの踊り、黄金の仏像の踊り( 改訂版 )も見逃せません。白眉は失意のソロルが、阿片の力で 影の王国 でニキヤと出会うシーン。 白いチュ
チュ姿のコール・ド・バレエは幻想的で 、見せ場となります。1961年の キーロフ (マリインスキー )・バレエのパリ公演の全幕上演までは長らくロシア 以外では上演されませんでした が、 今や世界各地のバレエ団で上演されています。
1980年 にはキーロフ出身の ナタリア・マカロワがアメリカン ・ バレエシアターに振付、本人もニキヤ役で出演、 1991年にユーリ・グリゴロヴィッチがボリショイバレエに 振付上演、 1992年 ルドルフ・ヌレエフがパリ・オペラ座に振付 、1999 年にはウラジミール・マラホフがウィーン国立バレエ団に振付、 最近では、2018年 11 月にベルリン国立バレエ団でアレクセイ・ラトマンスキーがプティパによるオリジナル 版 を踏襲して振付上演しています。仏教とヒンズー教、寺院の巫女など、往々にして正しくない点もありますが、筋書きに沿った展開、ディベルティスマンもドラマ性を強調されて目が離せない、そして、バレエ・ブランの登場と、人気の理由なのでしょう。
作者であるマリウス・プティパはフランスの舞踊一家の生まれで、父ジャン・アントワーヌは振付家、教師、兄のリュシアンはパリ・オペラ座の人気舞踊手でした。マリウス自身もナント、ボルドー、マドリードなどで踊っていましたが、ペテルブルグ・ボリショイ劇場の第1舞踊手の地位を得ます。ペテルブルグデビューはマジリエ振付の「パキータ」でしたが、本人は自分の振付の才能を信じていました。ジュール・ペローがペテルブルグの首席メートル・ド・バレエとして着任すると、熱心に振付法、作舞法を学びますが、なかなか世に認められませんでした。1862年「ファラオの娘」を振付、盛名は一気に、そして着実に才能を開花させていきます。1863年の「「海賊」(新版)、1869年「ドン・キホーテ」、1890年の「眠れる森の美女」、1895年「白鳥の湖」と続くのは皆さんご存知の通りです。
1903年メートル・ド・バレエを退任、余生をクリミアで楽しみ1910年没。
2020年2月8日フェスティバルホールでの第47回芸術劇場は法村圭緒氏の演出振付で上演されます。
みなさんお楽しみに。
参考文献:「バレエ千一夜」薄井憲二(新書館)、「バレエ―誕生から現代までの歴史」薄井憲二(音楽之友社)
「LA BAYDERE」STAATS-BALLETTBERLIN(ベルリン国立バレエ団)
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