バレリーナである前に、すてきなレディでありますように!Vol.23
令和5年の第49回芸術劇場は「眠れる森の美女」全幕と決まりました。
ロシア・バレエ確立に心身を捧げた振付家マリウス・プティパ、音楽美術に造詣が深かった帝室劇場総裁イワン・フセオロジスキー、尽きることのない美しいメロディーで知られるピョートル・チャイコフスキーの、それぞれの最高の業績の結合で生まれた作品です。
1890年に初演されて以来、どれだけ多くのオーロラ姫が世に出たことでしょう。プティパ原典版を元に数々の振付も世に出、世界各地で上演される人気の演目です。筆者が観たユニークな作品2つ。
ヤン・リンケンス(現ハーグ王立バレエアカデミー校長)の「眠り」はコンテンポラリーのモチーフでオーロラ姫に贈り物をする妖精たちは男性2名のお付きを従えたパ・ド・トロワでソフトシューズ、カラボッスがクライマックス:オーロラ姫と王子の結婚の場に再度現れ、心改めて祝福するため赤ワインをみんなに振る舞い乾杯、とそのワインには毒が、全員が雪崩のように倒れる中、カラボッスが一人ほくそえんでの幕、当時(1999年)のベルリンっ子の心をわしずかみ、チケットは毎回完売状態でした。
また、コンテンポラリーバレエ界の寵児ナチョ・ドュアトはオリジナルを踏襲しながらも独自のメソッドを用いた振付を各所にちりばめ、観客をあっと言わせ、舞台美術、衣裳を簡素化しながらも華やかに、舞台進行もピッチアップした作品に仕上げ、ベルリン国立バレエ団(初演2015年2月、世界初演:2011年Mikhailovsky-Theater St.Petersburg)の当時の人気作品に。
さて、こちら関西支部上演の「眠り・・」はどんな舞台になるか、ご期待ください。準備は着々、現在出演者オーディション参加者を募集しております。
この壮大なバレエ制作に参加してみませんか。
みなさんのご参加をお待ちしています。
筆者:小西 裕紀子
第49回バレエ芸術劇場で「眠れる森の美女」が上演されるにあたって、これまでの公演に出演してこられた佐伯茂先生にお話を伺いました。
(聞き手: 錦見真樹 文中敬称は省略しています。)
Q1. バレエ芸術劇場「眠れる森の美女」に出演されたのは第何回(何年)ですか。その時の振付者と、主演メンバーを教えてください。
A. まず第9回1982年。芸術監督は友井唯起子、演出安積由高、振付は三宅哲司、友井桜子、岡本博雄、橘照代でした。オーロラ姫は住井悦子。僕が演じたのは第一幕の四人の王子と、三幕ブルーバードです。フロリナ王女は脇香代、伊豆涼子の2人でした。それから第14回は1987年。演出安積由高、振付望月則彦、オーロラ姫は森本由布子でした。
僕はデジレ王子を演じました。
Q2 それぞれの回の「眠り」の演出、振付の大きな特徴は何でしたか?
A. 第9回は幕ごとに振付者が違って、すり合わせが大変だと思いました。全体的にはキーロフ版に近かった。第14回の時はキーロフ版がメインになっていたと思います。
Q3 リハーサル、本番で1番苦労されたことは何でしょうか。
A. 第9回の時はオーロラ姫、フロリナ王女二人の相手役なので法村友井、大阪バレエ、岡本の稽古場を行ったり来たり。当時は男性ダンサーの数が限られていたので二役は当たり前でした。まだ若かったので、本番はがむしゃらに踊っていました。
第14回の時、振付の望月先生と意見が対立して、ケンカ寸前になったこともありました。それを見かねた湯浅先生が仲を取り持ってくださって、無事本番を迎えることができました。
Q4 リハーサル、本番で1番楽しかったことは何でしょうか?
A. 4人の王子は比較的馴れていたのもあって楽しかったです。ブルーバードは既に50回位は踊っていたけどまだまだ余裕がなかった。でも終わった後で友井唯起子先生からお疲れさま、良かったよと激励された事が印象に残っています。
第14回についてですが、王子の出番は二幕からなのに二幕にソロが2つ、三幕のグランバドドゥにマズルカ、サラバンドとたくさん踊りがあります。疲れきっているときに安積先生はじめ先生方、出演者の皆さんが楽屋へわざわざ挨拶に来てくださったのを今も覚えています。
Q5 今年「眠り」が上演されますが、出演者のみなさんに、大切にしてもらいたいと思われること(守って欲しいこと)は何でしょうか。アドバイスをお願いします。
A. 「眠り」に限らずグランドバレエは主役が上手でも、ソリストが上手でも、コールドが上手でも成り立ちません。出演者全員がジグソーパズルのワンピースです。たった一人でも欠けるとパズルは完成しません。それぞれが自分の踊りに責任を持ち、自分なりに精一杯踊る事を目指せば必ず良い舞台を作る事ができます。皆さんがんばってください。
Q6 その他に印象に残っておられるエピソードなどはありますか?
A. 時間の関係などで難しいことなのですが、指揮者やオーケストラの方々ともっと細かく合わせたり、調整ができればいいなあと何度も思いました。かなりその方向に進んで来てくれていると思いますが、課題として心に残っています。
「バレリーナである前に、すてきなレディでありますように!」は、協会員、また、その生徒の皆様が、すてきな(女性)レディ、(男性)ジェントルマンと周りから認められるような振る舞いや情報を、様々な角度からご紹介するコーナーです。)