(公社)日本バレエ協会関西支部
2025-02-13

第51回バレエ芸術劇場、無事に閉幕いたしました

第51回バレエ芸術劇場「ドン・キホーテ」が2025年2月1日(土)フェスティバルホールで満席のお客さまからの拍手に包まれて、無事に閉幕いたしました。

長いリハーサル期間を過ごして本番に臨んだキャストやスタッフの声を、インタビューを通してお届けします。(敬称略)

⭐️改訂振付 山口 章

Q1)今回、ドンキホーテ全幕を改訂振付されるにあたって、特に工夫されたことや、最もやりたいと思っておられたことは何ですか。

A1)バレエ「ドン・キホーテ」では、やはり主役はキトリとバジルですが、タイトルロールであるドン・キホーテと友のサンチョ・パンサの「ドルシネア姫を探す旅」の物語としてパンフレットの解説を読まなくても理解出来る作品を成立させたかったです。その中で登場人物を其々に粒立て、オールキャストでしっかり物語を展開出来ればと思い今回の形にしてみました。

Q2)最も大変だったことは何ですか?

A2)楽曲もシーンも多い作品で今回はキャスト数も多かったので、ダンスシーンやお芝居の流れなどのブラッシュアップを限られた時間の中で進めるのが大変でした。

Q3)実際に公演を終えられての感想を教えてください。

A3)客席から観せて頂きました。
ただただ出演者達の情熱とお客様の温かい拍手に感謝です。

⭐️指揮者 冨田 実里

Q1)今回は通常ドン・キホーテ全幕ではあまり使われない音楽も出てきますが、指揮されるにあたって、その点も含めて今回の全曲に対するお考えを教えてください。

A1)ドン・キホーテの初演は1869年、プティパの振付とミンクスの音楽で上演されましたが、その後振付家やダンサーの意向によって、音楽はどんどん改編されてきました。例えば3幕のグラン・パ・ド・ドゥも初演の時はまだなく、後から加えられていったもの。また2幕キューピッド、森の女王のヴァリエーション等、今はドン・キのスタンダードと思われている曲でも、ミンクス以外の作曲家による楽曲が実は多いです。そしてドン・キは、元々の曲がとてもシンプルな作りになっているので、たくさんの編曲家たちが多種多様に編曲していきました。編曲も含めて考えれば、この世界には私にも把握できない位のたくさんの種類のドンキの楽譜があります。事実今回のドン・キで初めて知った曲、見た譜面もありました。海外のバレエ指揮者や楽譜屋に情報を問い合わせたこともありました。
というわけで、バレエ指揮者(少なくとも私)にとっては、ドン・キは振付・演出によって音楽の内容がいかようにも変わりうるバレエ作品の一つ、という認識があります。今回も山口章先生の独自の演出の場面がいくつかありましたが、ドン・キホーテとドルシネアの関係をより濃密に描いているところは、とても効果的で面白いと思いました。

Q2)実際に演奏を終えられてのご感想をお聞かせください。

A2)バレエ協会関西支部は、いつも明るくあたたかい雰囲気で、「バレエ大好き!」の方々がいっぱいで元気をいただきます。今回の演目は喜劇の「ドン・キホーテ」、関西の皆さんにぴったりな演目だなと思いながら、私も楽しく指揮させていただきました。関西フィルの皆さんも軽快で楽しい音楽を作ってくださり、ありがとうございます!「ドン・キホーテ」は私が全幕バレエを初めて振ったデビュー演目であり、振る度に総合芸術の楽しさ、バレエの美しさを思い出させてくれる、大好きな演目の一つです。今回も幕がおりた直後に涙ぐんでいる若いダンサー達の姿を見て、私も初心を忘れずにまた頑張ろうと思いました。私事ですが、昨年は出産と重なり芸術劇場に出演できませんでしたが、今年は0歳の娘を実家に預けて大阪にやってきました。
今回「お母さんになったんですね!がんばってください!」と声をかけてくださった方もたくさんいて、とても励みになります。毎日が爆速で駆け抜けていく日々ですが、楽しみながらママ指揮者を過ごしていきたいと思っています。またお会いできる日を楽しみにしています!

⭐️キトリ役 佐々木 夢奈

Q1)今回、役を演じるにあたって工夫されたことや、特に気をつけておられること、本番でやりたいことは何ですか。

A1)どの舞台でも大事にしていることですが、今回はいつも以上に先生方やダンサー達皆さんと積極的にコミュニケーションを取ることを心がけました。
それぞれの所属の壁をこえてダンサーが集まるバレエ芸術劇場。今回初めて出演させていただいたため、初共演の方も多く、また新演出ということでどうしても受け身な姿勢になってしまいがち。
ただ、「ドン・キホーテ」という作品に不可欠な、スペインのエネルギッシュさや夢の場の多幸感は、ダンサー達同士の信頼関係があってこそ生まれるものだと思うので、踊っている時はもちろん、スタジオの隅で出番を待っているときでも極力自分から誰かとコミュニケーションを取ることを意識しました。
作品の空気作りにプラスになれば、という思いと、そうした結果私自身にもアドバイスをいただけたり、会話を通して”あ!こうしてみようかな?”という発見があったり、自身の役作りにも繋がったと感じます。

本番は、広い広いフェスティバルホールが満席!そしてオーケストラ演奏での上演。山口章さんによる「ドン・キホーテ」ならではの演出も沢山。ワクワクが止まらないか、怖くて逃げ出したくなるか…今はまだ想像出来ない空間ですが、そこで起きる化学反応を思いっきり楽しめるように、そしてその場を皆さんとシェア出来る感謝を込めて踊らせていただきたいと思います。

Q2)実際に役柄を演じてみられての感想を教えてください。

A2)本番当日の通し稽古を終え、”ここから出番直前に自分は一体どんな感情になるのか…”と少しそわそわしながら迎えた開演だったのですが、出演者•スタッフの皆さんも、お越しくださったお客様たちも、オーケストラの演奏も、お互いを鼓舞するような空気感が本当に温かくて…1幕の冒頭ソロで舞台に飛び出す時は不安な感情は一切沸かず、ワクワクが止まりませんでした!

まだまだ未熟な面も多々ありますが、舞台上で”沢山の方々に支えられているお陰様で私は踊れている”と再確認するとともに、沢山のパワーを受け取りながら、幸せいっぱいに過ごすことが出来ました。

舞台は生ものなので、思いもよらないアクシデントもちらほら。でも、それも含めてその場その場で生まれるお芝居や表現をキトリとして思い切って楽しめました。

キトリというお役が私の中でより一層特別なものになりました。
今回いただけたこの貴重な機会と学びに感謝して、この経験を糧にまだまだパワーアップ出来るよう精進してまいります!

⭐️バジル役 奥村 康祐

Q1)今回、役を演じるにあたって工夫されたことや、特に気をつけておられること、本番でやりたいことは何ですか。

A1)振付の山口章さんから関西らしさのあるラテンな雰囲気のドン・キホーテにしたいと聞いているので、なるべくイメージ沿う様に、役作りしていきたいです。また佐々木夢奈ちゃんとは全幕初共演なので、舞台の上で特別な瞬間が生まれることを楽しみにしています!

Q2)実際に役柄を演じてみられての感想を教えてください。

A2)15年振りに関西バレエ協会公演に出演させていただいて、やはり歴史あるこの公演の重みをとても感じました。
舞台の上では関西のパワー、安心感があり、お陰様でとても自然に楽しくバジルを演じることができたと思います。

夢奈ちゃんとは、舞台で遊べるくらい初めてとは思えないほど信頼感のあるパートナーでした。
章さん理想の「ドン・キホーテ」になっていれば嬉しいです!

協会役員の皆様、事務局皆様、舞台スタッフの皆様、そして一緒に踊ったダンサーの皆様、本当にたくさんの方々にお世話になりました。ありがとうございました!

⭐️ドン・キホーテ役 内野晶博

Q1)今回、役を演じるにあたって工夫されたことや、特に気をつけておられること、本番でやりたいことは何ですか。

A1)今回、ドン・キホーテ役をいただいた時から原典にあたり、少しでも役を自然に演じられるよう、理想家であるドン・キホーテの想像を膨らませてきました。
練習が始まると、振付の山口章先生から今回のドン・キホーテは、「年をとり過ぎていないこと」と、「紳士である」というイメージでやりたいとお話がありました。
練習を重ねるうちに、ドン・キホーテが持つ「どうすれば世の中をより良くできるのか?」という理想は、私たち舞台に取り組む人がより良い舞台作りをしたいとか、日常においても家族や大切な人の幸せを願うことに通じるものがあると思います。
誇り高く理想を追い求める姿や、誰に対しても丁寧で紳士な姿、常にドルシネアを大切に思う姿が自然と出せるように心がけています。

今回の『ドン・キホーテ』は、プロローグが10分以上あり、今までに見たことのないプロローグになっています。また、作品の端々にドルシネアの幻影が登場するなど、ドン・キホーテの人柄が垣間見える演出になっています。
真摯に理想を追い求める彼の人柄が、作品の中に出せるよう、大切に演じさせていただきます。

Q2)実際に役柄を演じてみられての感想を教えてください。

A2)ドン・キホーテの持っている理想を胸に何かを積み上げる部分は、自分の中にもある気持ちなので、僕なりのドン・キホーテが表現できたのではないかなと思います。
それでも、初めての大役なので、戸惑うことが多かった僕に、先生方や経験豊かな先輩方が丁寧にアドバイスをくださいました。この舞台を通して、未熟な僕を大切に育ててくださっていることをひしひしと身に感じる日々で、言葉では言い表しようのない感謝で一杯です。
今回の公演では、本当に多くの方にお世話になりながらも、ドン・キホーテを演じさせてもらえる機会をいただけて、とても幸せでした。これからも、教えていただいた沢山の事を胸に、バレエとは、表現とは何かを考えていきたいと思います。

⭐️サンチョ•パンサ役 末原雅広

Q1)今回、役を演じるにあたって工夫されたことや、特に気をつけておられること、本番でやりたいことは何ですか。

A1)サンチョ・パンサという役は踊る部分は少ないのですが小道具の扱いが多かったり段取り、と言うか物語の進行の上ですごく重要な役だと思うのでまず作品の振り付け、全体像を把握する事を心がけてます。
その上で山口章先生の思うサンチョ・パンサ像や自分なりの個性を出せて行けたらな、と思います。

Q2)実際に役柄を演じてみられての感想を教えてください。

A2)本番ではやはり少しアクシデントや思い通りに行かない部分がありました、がダンサーそれぞれ皆のキャラクターがすごく立っていて、ダンサー同士で楽しんで、互いに応援しあっているのが客席にも伝わっていたら嬉しいな、と思っています。
ありがとうございました。

⭐️ガマーシュ役 山本庸督

Q1)今回、役を演じるにあたって工夫されたことや、特に気をつけておられること、本番でやりたいことは何ですか。

A1)今回演じさせて頂くガマーシュという役は、私自身1・2回程度しか演じた事のない役柄でしたので、全てのマイムや立ち振舞い、動きの引出しが自分の中に少なく、どの様に表現すれば伝わるのか?と考えておりました。

とても難しいと感じた所は貴族感を失わずに、少しまぬけで可愛らしく一風変わったお金持ちガマーシュを創る事でした。
共演者の方々にもアドバイス頂いた事も、色々と取り入れて当日楽しみたいと思います‼

Q2)実際に役柄を演じてみられての感想を教えてください。

A2)大変素敵な劇場で豪華なキャスト・スタッフ・舞台セットの中で演じたガマーシュとても気持ち良く楽しかったです。

本番と言うのは、やはりLiveなのでリハーサルで出来ていた所が出来たり出来なかったりしますし、舞台上で普段気付かなかった事が見えて、その場でコミュニケーションを取れたりします。今回はそう言う様々な事が上手くいった様に感じました。

自身のガマーシュの見え方については、当日観に来て頂いた方々から声を聞いてみます…。

今回、バレエ芸術劇場「ドン・キホーテ」に出演させて頂き本当に有難うございました‼皆様ブラボーでした‼

写真:(有)テス大阪


⭐️メイク担当 ミヤケ ヒロキ

そして最後に、今回のドン・キホーテ全幕のメイクを担当されましたミヤケヒロキ氏に各キャラクターのメイクシーンを取材しました。
メイクを施すとたちまち登場人物が目の前に現れました。その模様をご覧下さい。

経歴

Depiction Lab ミヤケ ヒロキ

メイクアップの専門学校を卒業
2002年 チャコット株式会社に入社し舞台メイクを始める。
長年、メイクアップアーティストとして全国の発表会、公演に携わりながら商品開発やメイクレッスン、メイクプランニングなども行う。
2024年退社後、2025年Depiction Labを立ち上げフリーランスメイクアップアーティストとして活動中


今回、ドン・キホーテ全幕主要な役柄のメイクのお話をいただきまず始めたのはイメージ作りです。

一般的にはガマーシュやサンチョはファニーなイメージ、ドン・キホーテは気難しい老人なイメージ。ロレンツォは頑固な強面イメージのようにある程度、デフォルトされたイメージがあります。

今回は、改訂振付の山口氏が思い描くイメージ、配役されたダンサーの方々の意見や希望を聞きながら老人すぎたり、ファニーさよりも綺麗なイメージだったり頑固さの中に芯のあるかっこよさ。のように一般的なイメージ+プラスαを心がけました。
ダンサーの皆様全員、元々のお顔立ちがハンサムすぎるので、崩すところはしっかり崩してますのでそこは個人的に気付いて欲しい点です。


ドン・キホーテはちょっと不健康に見える明るめのファンデーションにしてますが目に力強さが出るようにアイラインを強調しています。
リアルさをより出したかったのでこだわったのは、付け髭は使わず、ご本人の髭をそのまま白くしました。


ガマーシュはよくある白塗りしたファニーさ、ではなくナチュラルなトーンで肌作りをして、アイシャドウのグラデーションなどは綺麗にしつつも、オーバーリップやホクロもホントにある位置を使って大きくしたりして、良い感じに綺麗になりすぎないように崩してます。


サンチョはオレンジのアイシャドウやチークも全体的に柔らかくいれて、可愛いさを全面に出してるのに不精ヒゲ、二重アゴを描いて若くなりすぎないように崩してます。


ロレンツォは日焼けした感じにしつつ、皺や白髪などは出しすぎないようにして、あまり年齢層は高めにしすぎず力強さも出るように顎髭のみ描いて表現しています。


町の踊り子は、当初より衣装の色が少し変更あったので予定していたカラーではなくパープル系に変更しましたが、妖艶かつご本人のフレッシュさも保つように注意しました。


ジプシーは、登場シーンのライトの当たり具合も考慮して、肌のトーンはしっかり日焼け肌に。
メイクも少しハッキリさせてます。
目元にツヤ感のあるゴールドで、グラデーションは繊細になるように意識しました。


メルセデスは、今回の衣装はローズ系でしたので目元も赤とブラウンをミックスして暗くなりすぎないようにしています。
通常、スパニッシュなテイストをするときはアイシャドウにブラックを多めに使用しますが、今回はブラウンで溶け込むようにしています。
リップは深めの赤にしてセクシーさが出るように注意しました。


もっともっと細かいこだわりを挙げればマニアックすぎるので、割愛させていただきますが
今までのイメージも保ちながら綺麗さを出せるところは出して、崩せるところは崩してのバランスをメイクで表現しています。

ミヤケ ヒロキ


これからドン・キホーテ全幕をご覧になるときは、キャラクターのメイクに注目する事も楽しみのひとつに加えてみてはいかがでしょうか?

メイク取材 塚本千里

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