(公社)日本バレエ協会関西支部
2022-11-12

JBA WEST ART MESSAGE事業終了報告

2022年11月10日(木)
兵庫県芸術文化センターKOBELCO大ホールにて第一回JBA WEST ART MESSAGE 公演が行われました。
本公演は、新型コロナウィルス感染拡大の終息が見えない状況の中、バレエを愛するダンサーの皆様と観に来てくださるバレエファンの方々に
「踊る楽しさ」
「観る楽しさ」
「創る楽しさ」
を振付者と共に共有するべく
公益社団法人日本バレエ協会関西支部が立ち上げた事業になります。
記念の第1回は
第一部は古典バレエの伝承 
田上世津子氏振付のパキータ

第二部は融合
バレエコンサートと創作

第三部は越境の先に
構成・振付寺田宜弘氏のゴパック

本公演のプロデューサーである樫野隆幸氏は皆様と共に素晴らしいバレエの世界の出会いがありますようにとの思いがありました。

終演後、樫野氏は

『出演者全員が一丸となり素晴らしい舞台を開催出来たこと、本当に感謝しています。
それぞれ作品に対しての想いが、観客の皆さまに伝わる良い舞台になったと思います。

観に来てくださった方々から沢山のお褒めの言葉をいただきました。』

と感想を述べておりました。

広報部ではこの公演の取材をしております。

まずは錦見真樹氏と山口章氏による
ロングインタビューをご覧下さい。


11月10日 第一回アート・メッセージ公演

島﨑徹先生インタビュー

―バレエ協会関西支部で、今回初めてアート・メッセージ公演を企画しました。
そこに作品を出していただいて、どのようにお感じになっていますか。

島﨑:舞台の機会をいただくというのは何よりもありがたい。なぜかというと、舞台があるからこそ創るからです。創るからには、創り終わったあとには創る前とは違った場所に自分がいる、という感覚にならなければと思っています。
今回は二本やります。一本はもともと、パリのオペラ座の中にイタリア人のグループがあるんですが、そこから頼まれたものなんです。オペラ座のリュドミラ・パグリエロとアレッシオ・カルボーネという二人のために作った作品。コロナのせいでできなくなったんだけど、これが「SAKURA」で、日の目を見ないでいたものを今回こういう機会をいただいて、日本でできることになりました。
もう一本の「Another Nature」はこのために創りました。自分から舞台を企画したりするのは苦手なので、こうして舞台を与えてくれる方がいるから、創ることができるし、やりたいというエネルギーも生まれます。とにかく感謝の気持ちでいっぱいです。
 アート・メッセージの企画は、続けてくれたらありがたいですね、僕がやるんじゃなくても。

―作品についてもう少し教えてください。
島﨑:「SAKURA」は優れたバレエダンサーを生かすことを考えて創った作品です。ソックスをはいていますが、僕にとってはバレエで、今のバレエはこういう風に見えるべきだと思っています。なぜ「SAKURA」かというと、僕とオペラ座のダンサーたちにとっては、これが始まりだから。日本では四月が始まりの時でしょう。しかもこのベートーヴェンの音楽、題名知らないで、いい曲だとずっと思っていたんですけれど、「SAKURA」と題名付けてから調べてみたら「春」という曲でした。ベートーヴェンってやっぱりすごいですよね。聴いているだけでそのように感じるわけだから。
 もう一つの「Another Nature」ですが、やっぱり年を取ればとるほど自然の中に存在する美を感じるわけです。人間が作るものは全部自然の中の美から来ているし、自然の美がない都会の中では、自然の美の代わりに芸術というものが栄えてきたような気がするんです。「Another Nature」は「もう一つの自然」ですが、僕が作る人工的な、もう一つの美です。これは苦労しました。こういう音楽を扱ったことがなかったから。坂本龍一さんが海外の人とコラボレーションした音楽なんですが、ちゃんと創りたくてすごく時間をかけました。
よい振付家になりたい、という気持ちは強まるばかりです。


寺田宜弘先生インタビュー

―バレエ協会関西支部で、今回初めてアート・メッセージ公演を企画しました。
そこに作品を出していただいて、どのようにお感じになっていますか。

寺田:樫野先生から素晴らしいお話をいただいて、非常に光栄です。私はウクライナに35年間住んでいるんですが、その中でウクライナが今までにない苦しい時代を迎えています。ウクライナの民族舞踊を代表するゴパックをバレエ協会のダンサーたちが踊る。これは芸術だけではなく、芸術を通してすべての国民が一つになって、新しい時代、新しい平和な時代を迎えるメッセージだと私は思います。今回特別にうれしい、生きていてよかったと思ったことがあります。8月からリハーサルをさせていただいて、いつもそれをインスタグラムに載せていたんですね。そうしたら毎回、ウクライナの友人や、全く知らない人たちからメッセージが届くんです。このウクライナの大変な時に、日本のダンサーたちが私たちの国の文化を紹介してくれる、これ以上私たちウクライナ人にとって幸せなことはない、本当に感謝していると。これは今でも続いています。なので今回は芸術だけでなく、人の命がつながっていく、今後の若い世代に素晴らしい平和な時代を残していく、そういうメッセージでもあるんじゃないかなと思っています。

―今の世界情勢の中で、無力感にとらわれることがあります。何をしても圧倒的な力に押しつぶされるような。そこに対してこうやって立ち向かっていく気力、持ちこたえられる強さは、どうやって持続されているのでしょうか。

寺田:私は芸術家なので、政治や戦争の話はしたくないし、しないんですね。何があっても芸術の力で、無理なものはない、必ずよい方向に進めていく、それが芸術の力だと私は思います。芸術の力で人に喜び、悲しさ、未来、そういったものを与えられる。これは芸術にしかできないことです。バレエだけではなくすべての芸術にしかない力です。芸術や文化があるからこそ新しい時代を迎えることができる。私はそういう風に考えています。

―そのお言葉は一番の希望になります。そういう風にしてしか、圧倒的なものには抗えないと思います。同じ力でぶつかっても両方が消滅するだけなので、違う方向から立ち向かうしかないと改めて感じます。では作品についてお聞かせください。

寺田:ゴパックは、8月から9月半ばまでリハーサルさせていただいて、あとは日本の先生に見ていただいてきました。アメリカから戻って久しぶりにリハーサルを見せてもらって、本当にすべてのダンサーたち、もちろん年齢は違うのですが、目が輝いているんです。
8月の最初のリハーサル前に、ゴパックの踊りの内容、意味、ウクライナの文化の話をして、そこからスタートしたんですね。その時に伝えたかったメッセージがうまく伝わったんじゃないかなと思いました。今日の舞台、最後ゴパックで終わるんですけれども、素晴らしいフィナーレになると思います。

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