(公社)日本バレエ協会関西支部
2024-02-27

第50回バレエ芸術劇場「白鳥の湖」全幕が無事に閉幕いたしました。

2024年2月17日(土) 大阪フェスティバルホールにて第50回バレエ芸術劇場「白鳥の湖」全幕が無事に閉幕いたしました。

改定振付に山本隆之氏をお迎えし
関西フィルハーモニー管弦楽団のオーケストラの演奏とともに盛大なるグランドバレエが展開されました。
今回は文化庁子供文化芸術活動支援事業「劇場・音楽堂等の子供鑑賞体験支援事業」により、18歳以下の皆様をおおよそ700人招待で、約630人に鑑賞して頂きました。

当日の舞台の模様をお写真で、また出演者の感想も掲載いたしますので
お楽しみ下さい。

改定振付 山本隆之氏より

今回の「白鳥の湖」は古典バレエのスタンダードであるプティパ・イワノフ版を踏襲しています。しかし今の時代に観て、ストーリーがより明確に伝わるようにしたいと考えました。 僕の版ではオディールがプロローグから登場し、3 幕でオディールがオデットに化けているということが分かる演出にしています。
最終幕では王子とオデット対ロットバルトとオディールという構図を作り、最後は愛の力で悪を倒すハッピーエンドを求めました。
ダンサーの皆さんにはご負担もおかけしたと思います。
当日初めてオーケストラの音を聞き、「白鳥の湖」というハードな作品を一日でゲネプロと本番の二回踊るタイトなスケジュールの中でも、ダンサーたちが身体を調整し、一人も欠けることなく本番を素晴らしく踊ってくれたことを本当に嬉しく思っています。僕も長年踊 ってきましたが、このようなスケジュールは経験したことがありません。皆さん本当によく走り切ってくれました。
このスケジュールに関しては指揮者の井田さんとも意見が一致しました。
「白鳥の湖」はオーケストラにも指揮者にも大変ハードな作品です。
演者奏者にとってハードであるからこそ見応えもあるのですが、オーケストラの皆さんはゲネプロ後に修正する練習時間も取れないまま本番を迎えていただくことになりました。 オーケストラも指揮者も、ダンサーも振付家も作品に対するそれぞれのプライドを持って舞台に臨んでいます。
バレエ芸術劇場は 50 年の偉大な歴史を持ち、充実した練習環境や協力的な先生方も揃っています。「あと一歩」が先生方の情熱で叶えば、さらに素晴らしい発展があるものと期待しております。
リハーサルの期間中、スタジオを提供して下さった大阪バレエアカデミーの皆様には細やかにご協力いただき、役員の先生方には舞台に向けて様々ご指導いただきました。
心より感謝申し上げます。

第50回バレエ芸術劇場「白鳥の湖」全幕
キャスト・スタッフインタビュー

北野優香さん(オデット)
Q 公演前の心境をお聞かせください。
A 緊張していますが、舞台を皆で成功させることが目標です。
Q 今回、一番難しいと思ったことはなんですか。
A まず「鳥の動き」が難しいと思いました。そしてその自分の動きが、周りと調和しているかどうかです。私のいるべきポジションと周りの人々のポジションがうまく合っていないと違和感を持たれてしまうからです。それと、個人的には2幕4幕のパドドゥの違いを出すのが課題でした。同じ白鳥ですが、2幕は出会って間がない、でも4幕ではもっと違った感じの表現をしなくてはいけません。
3幕は、いつも踊っている役柄ではないので、強さを出すことを模索しました。
自分が思っていた強さと、今回求められている強さとは違っていました。でも、難しいながらも楽しいという気持ちはあります。
Q 本番に向けての目標は?
A ストーリーが皆さんに伝わることです。私の踊りが違和感なく作品として伝わり、見た方に充実した気持ちで帰っていただきたいと思います。
Q では、楽しかったことを教えてください。
A この舞台に向けて身体づくりをしてきましたが、取り組む前と比べて少しずつ変化してきました。その変化が楽しかったのと、あと水城さんと組ませていただくのは初めてなのですが、水城さんとの距離感を少しずつ、2人で作っていくのが楽しかったです。

 


水城 卓哉さん(ジークフリード王子)
「白鳥の湖」の主役は何度か経験させていただいた事はあるのですが、今回は山本隆之さん演出振付の舞台でまた新しい経験となりました。

王子としての立ち振る舞い、細かい所作など丁寧に教えていただいたき、その演出の中で自分なりに想像を膨らまし今回の役に挑みました。

王子の心情がより細かくけれどもハッキリと演出されてる振付でしたので、物語が進むたびに自然とその役に没入していく感覚でとても楽しかったです。

今回初めて協会の舞台に参加し、かつ主役というとても緊張する舞台でしたがたくさんの方の支えがあり何とか終える事が出来たと思っております。
この様な機会をいただき本当にありがとうございました。

 


青木崇さん(悪魔ロットバルト)
Q 公演前の心境をお聞かせください。
A ロットバルト自体、数回やったことがあるだけなので、今回どのように作っていけばいいのか迷っていました。でも隆之さんがしっかり指導してくださったので、その通りにがんばろうと思っています。
Q 途中、オデットとオディールの入れ替わりもありますね。
A そこは照明などの技術の部分も大きいですが、自分の見せ方も考えました。
Q 一番難しかったのはどこですか。
A 普段自分が演じていたロットバルトとイメージが違ったので、それを変えていくのが難しかったです。あとは音楽の取り方ですね。オーソドックスにやっている時の取り方と、ちょっと違ったりするので。やり慣れていないことが出てしまうなと思いました。
Q 演じていて一番おもしろいと感じたのはどんな点ですか。
A オディールが2人に分かれているところですね。

 


椿原せいかさん(悪魔の娘オディール)
Q 公演前の心境をお聞かせください。
A 今回、隆之先生の振付で初めて舞台に立たせていただくのですが、所属のバレエ団とはまた違った雰囲気と、いい環境でリハーサルさせていただきました。自分の心境にも色々変化があって、最初は大役をいただいて「ええっ」と思いましたが、少しずつ、与えていただいたものに応えられるようにがんばっていこうという気持ちになりました。
いざ今日を迎えて、与えていただいたものを発揮できるように、ひとつずつ丁寧に作り上げようと思っています。
Q 一番難しかったことはなんですか。
A 表情ですね。最初は私の思うオディールの感じでリハーサルして、見ていただいていたんですけれど、周りが出来上がってきて、皆との調和を考える時点で、もう少し表情が恐いといいますか、「悪魔の娘」としてのオディールである方がいいと言われました。
恐い表情で踊るという経験があまりないので。オディールのパドドゥはやったことがありますが、その時も誘惑するというか魅力的な感じでと思っていました。表情と表現が独特というところが、難しかったです。
Q 一番おもしろかったことはなんですか。
A 普通の白鳥の湖とは、ぜんぜん違う演出です。普通黒鳥は、3幕だけしか出てきませんが、プロローグもついていて、3幕では照明のテクニックで入れ替わりがあったり、ヴァリエーションを踊りますがそれは2幕。4幕では戦うシーンがあって、最後は負けてという演出が他にはない、隆之先生独特の演出なので、それがおもしろいし、またありがたいなと思っています。

 


今回の「白鳥の湖」全幕では、山本氏の希望で特殊なメイクを、ロットバルトとオディールに施されています。
その模様を取材しました。


三宅宏樹さん(チャコットメイクアップアーティスト)
Q 今回、ロットバルトとオディールのメイクを担当されていますが、独特のメイクですね。
A 山本隆之さんからいただいたデザイン画をもとに作成しました。ロットバルトに使ったつけまつげは既成のものですが、オディールに使うものがなくて。最大のつけまつげをポスカ(マジックペン)の白で真っ白にして、そこへポスカのグリーンを塗りました。それを2枚重ね、間に羽をはさんでいます。制作にかなり時間がかかりました。写真のロットバルトのメイクは一度全部落として、本番用に額を白く強調して描き直します。

 


出演者の方たちの感想


 

A.N
今回の練習で「ナポリの踊りは民族が踊るように、アクセントが下になるように」と言われました。このように、民族の踊りをすることは今までにあまりなかったので、すごく興味深かったです。アクセントを下にして踊るのは簡単ではなくて、みんなで音取りを揃えるのが大変でした。観ていて違和感のないように、手・足の運び方にも注意して踊りました。先生方に指導されたところを、みんなで一緒に復習し、本番に臨むことが出来ました。とても良い経験となりました。

K.Y
リハーサルから本番まで素晴らしいダンサーの方々と一緒に踊れたこと、とても幸せでたくさんの学びがありました。
道化の踊りは、技術はもちろんお客様を楽しませる心がないとできない踊りでした。たくさんの人を笑顔にできるよう、私らしく楽しく踊りました。
ずっと憧れていた白鳥のコールド。どう揃えるか、音の取り方、みんなと一緒にたくさん相談して、仲が深まっていくうちに、踊りも一つにまとまっていきました。そして、白鳥の立ち方や腕の使い方、毎回のリハーサルで新しいことをたくさん学び、成長することができました。
大きな舞台と素晴らしいオーケストラの音楽。特にオーボエの音色がとても心に残っています。
この舞台で経験させていただいたことは、一生の宝物で一生忘れません。

K.I
白鳥の湖の全幕上演はあまりないと思うので、出ることができてうれしかったです。
また、多くの上手な方たちを目の前で見て、その踊りをどのように表現するのか、ということを学ぶことができました。

S.K
今回の舞台で経験をまた1つ積み上げることが出来ました。
普段味わうことのないような大型の劇場で、豪華な舞台装置や生のオーケストラ、そして大勢の観客の前で演じることは、とても良い経験になりました。
数ヶ月間の練習で、周りと息を合わせることの難しさなど細やかな指導をいただいてとても勉強になりました。
また、自分の中で新たな課題を見いだすことができ、さらなる高みを目指してこれからに生かしたいと思います。

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